タイチの想い
仲買人、タイチ?
Taichi's IDENTITY
皆様、はじめまして。仲買人のタイチです。
Youtubeでふざけていることが多いですが、実は真面目(?)な一面も知って頂ければと思います。
当たり前にあった魚の風景
私は、宮城県石巻市の魚市場で仲買人をしております。石巻市の魚市場は年間200種類の豊富な海産物が水揚げされる日本有数の魚市場です。町の主要産業として、「水産業」が出てくるほど、海に生かされた場所で生まれ育ち、現在では石巻魚市場の仲買人として魚を仕入れ、全国に出荷する仕事をしています。
水産加工業を営む父親のもとで幼少期を過ごした私にとって、魚は非常に身近な存在で、「当たり前」の存在でした。その「当たり前」が崩れる出来事がやってきます。2011年3月11日の東日本大震災です。当時、私は東京で働いておりましたが、石巻の水産加工業者の95%が被災するという歴史的な大災害で、石巻の主要産業である水産業は壊滅的な被害を受けました。
震災前は、石巻に戻り家業を継ぐつもりはなく、一生懸命東京でサラリーマンをしていましたが、東日本大震災で変わり果てた町や、流された実家、父親の会社を見て、始めて石巻という地域を認識したことを覚えています。それまでの「当たり前」は崩壊し、実はこの地域産業は海に生かされていたことを再認識しました。
父は会社を再建すべく元の場所に、会社と工場を建て直しました。その時私は、「いつか石巻に戻り、この町に貢献しよう」と心に決めました。震災から時間はかかりましたが、2018年に石巻の株式会社布施商店に入社し、第2の人生をスタートしました。
未来永劫明るく、魚も美味しく。
水産業に携わり、見えてきたのは海の現状です。2000年に約14万トンの水揚げがあった魚が、2020年には10万トンと約30%減り、魚の小型化が顕著になってきました。科学的な根拠を基に様々なルールを決めて、自然と共生を試みる水産先進国は年々漁獲量を増やしていますが、日本の沿岸の水産資源量は減少の一途をたどっています。皆さんの周りでも「サンマが獲れない」などのニュースは耳にしたことがあると思います。自然環境が変化しているのは世界共通です。ただし、日本の沿岸の水産資源が回復しないのは、日本固有の問題なのです。未来永劫、魚を美味しく頂けるように、自分に出来ることは何なのか?そういうコトを考え始めるようになりました。
サンマが美味しい時期、実は他にも沢山の魚が日本全国に水揚げされています。ただ、どうしても秋と言えばサンマと言って需要が単一の魚に集中することが多いです。皆様に美味しい時期に水揚げされる、美味しい魚を発信することで、この集中した需要を分散することが出来れば、加熱する資源争奪戦も緩和することが出来るのではないかと考えています。
タイチの食堂
仲買人、タイチ?
Taichi's DINING
形は違えど、美味しい魚。
タイチが創る惣菜は、お客様に美味しいと思って頂ける商品作りを第一に考えています。そして、もう一つ大事なこととして「魚一匹から獲れる価値を最大化する」ことを心がけています。
世の中に流通されている水産加工品の多くは、その製造途中で様々なロスが発生します。具体的に言えば、魚のアラ(頭や骨)や、成型するときに発生する切れ端などです。これらの多くは、魚の餌として二次利用されるので、ゴミになっているわけではありません。 ただ、私が思うのは、もとは同じで形が違うだけの美味しい魚の一部なのです。
水産資源が減少していく日本において、魚一匹を無駄なく余すことなくいただくということは、いただく魚に対する最大の感謝であり、持続可能な社会を実現する為にとても大切なことだと考えます。
さらには、美味しく食べることで一匹から生み出される付加価値の総量が上がれば、我々仲買人が魚を現在よりも高く買うこともできるようになります。我々が魚を高く買うことが出来れば、漁師の人達や、水産品流通に携わる人達にも金銭的な面で還元できることも多くなるはずなのです。我々だけでなく、水産業界全体が魅力的な仕事で盛り上がらないと、美味しい水産品を未来永劫食べ続けることは難しいのです。
フレンチシェフと開発した「惣菜」。
今回、我々がつくる惣菜は、東京都目白にある「ブラッスリーラ・ムジカ」オーナーの梶村シェフに商品開発アドバイザーとして、意見を頂いています。取れたての鮮度の魚をふんだんに使った惣菜を、プロのレシピで製造しておりますので、本当に自信をもっておすすめ出来る商品となっております。そしてその惣菜の原料の一部に、お魚のアラ、切れ端を使用したりもしています。
食べれば食べるほど、魚が増え、みんなの食卓に笑顔が増える世界を目指して商品作りをしていきますので、是非ともご賞味ください。
布施 太一(仲買人、タイチ) 株式会社布施商店 代表取締役社長
2007年に大学を卒業後、大手総合商社に勤務し食品流通関係の業務に従事。
2011年東日本大震災が起こり、地元である石巻に戻ることを決意。
2018年に実家の家業である株式会社布施商店に転職し、2021年に代表取締役に就任した。
2021年7月より、世の中に海や魚について興味を持っていただくための施策としてYoutubeでの活動(「仲買人、タイチ」チャンネル)も開始した。趣味は、サーフィンとゴルフで、好きな魚は真鱈(マダラ)。